年賀状をどうも有難う。返事が遅れてしまい、大変申し訳ない。
今回のハガキには、連絡先が書いてあるのが、まずうれしかった。何度か手紙を書
こうとはしたのだけれど、既に卒業しているのかとも思い、送らなかった。あと、留
守番電話に2回、連絡くれたよね。あの時は全く江藤らしいと思ったよ。「今、晴海
に居ます。明日、シアトルに発つので、今夜会えないだろうか?」そういうスケジュ
ールが解っているなら、せめて2、3日前には連絡しろよ。
遅ればせながら、新年明けまして、おめでとう。そして就職というのかな? 配属 おめでとう。巡視線「ちょうかい」だって? ちょうかい。秋田なんて、また遠くへ 行ってしまって、少しは近くで落ち着けよ。でも江藤のことだから、何処へ行っても 全然、心配はしていないけど。北の海だと三保ヶ関部屋? 元い。恐ろしい程、寒い のだろう。体だけは充分に気をつけて、がんばって下さい。応援しています。
僕からの連絡は、何時頃が最後となってしまったのだろうか?
僕は平成元年4月に印刷会社に就職し、そこ迄は知ってるよね、そして、昨年3月
を以て退社した。丸二年、御世話になったことになる。その後、ビデオ制作会社に入
社、アシスタント・ディレクターのような仕事をしたが、3ヶ月で退社。以後、日払
いアルバイトを転々とし、3ヶ月間を過ごす。この時期は殆ど働かなかった。そして
昨年十月より、○光興産内で契約社員のようなアルバイトで現在に至っている。仕事
の内容は潤滑油の製造だ。この仕事が一応、今年の3月迄となっている。以上が、こ
の一年間の僕の近況だ。
決して順調な一年ではなかった。僕はこのまま潰れていくのだろうか、と不安にも なった。完全なスランプだ。少し詳しく書こうと思う。
大学での四年間、それに伴った新聞の仕事。この時期、僕は我武者羅でいつも怒っ ていた。浮かれている大学生やら、真面に評価されない仕事など、目に付くものに対 し、「俺はオ前とは違うんだゼ!」と思っていた。とにかく卒業さえすれば、自分の ような人間は正しく評価されるのだ。そう考えていた。
就職。これが印刷会社だ。僕の印象としてはとにかく楽だった。社会は甘くない、 だの言われ続けていたが、僕には甘かった。かと言って、仕事が出来た訳でもないが、 定年迄、波風を立てず過ごせるのだなと思った。又、僕が真面だな、と思える人物が 殆ど居ず、本当にこの程度で会社/社会というものが形成されているのかと実感させ られた。
突然、出来た自分の時間を僕は楽しんだ。コンサートを観たり、飲みに行ったり。 しかし、自分の時間はそれらだけでは埋まらなかった。僕は自分自身のことを色々と 考えるようになる。「このままでいいのか?」と。
一年目の10月27日、僕は仕事を終え、日本青年館に向かっていた。イギリスのバン ド「ストーン・ローゼス」のコンサートである。期待の新人だの騒がれていたが、僕 にとっては同い歳の連中ということが、とても気になっていた。
コンサート終了後、僕は呆然としていた。ロックという概念を打ち壊し、全く別の 次元を連中は提示していた。同い歳の連中が、自分達の感性で時代を築いているのだ。 とても衝撃的だった。そして僕自身の中で何かが変わった。奴等は自分達の音楽を引 っ提げて、イギリスから日本にやって来たのだ。なのに僕は市ヶ谷の小さなデスクで 自分の為ではない、生活の為の仕事を続けている。「いいのだろうか?」
二年目の夏、僕が大学時代から読んでいた音楽雑誌「○ッキング・オン」に社員募
集の告知が載った。「一体、僕に何ができるだろう?」と思っていた頃だ。僕は課題
作文を書き応募した。大好きな映画と音楽、これで飯が喰えたら幸せだ。とにかく、
それらの僕の得意な分野へ進んでみようと思い始めていたのだ。
900人を超える応募の中、最終の面接で落ちてしまった。20人中7名の採用だった。
とても残念だったが、自分の中で自信が生まれた。自分で考えていたよりも、評価が
上だったからだ。どうやらそれらの分野ならば、実力も発揮できそうだ。何の算段も
無かったが、僕は印刷会社に退職願を提出した。
映画と音楽、あと文字も書いてみたいと思っていたので、その辺りを求人誌で探し
た。純粋に映画と音楽に携わる仕事は中々、見つからなかった。
取り敢えず、ミュージック・ビデオ制作に魅かれ「○ュアー」というビデオ制作会
社に就職する。全く違う仕事に戸惑いながら、ADのような仕事をした。
裏の世界を見たとでも言うのだろうか? 代理店の存在、企業側の要求が鬱陶しく
感じられた。企業や商品のPRビデオが主軸なので仕方がないのだろうが、それらのビ
デオは「作品」ではなく「商品」であった。
又、会社内の人間で、映画や音楽の話が持ち上がらないのも奇妙だった。実際、話
してもレベルは違った。
ミュージック・ビデオの受注も殆ど無い事を知り、その他、金銭面等の問題もあり、
3ヶ月で退社した。
ビデオ会社を辞める頃、タイミング良く「○ッキング・オン」に再び社員募集の記 事が出た。僕は完全に入社する算段だった。今回は完璧だろう。課題作文を書き、応 募する。しかし何の返事が来なかった。不合格の通知も届かない。電話で問い合わせ てみると「不合格通知が送られていないのはおかしいですけど、一次面接に欠席者は 居無かったので、残念ですけど今回は…」という返答だった。本当に落ち込んでしま った。又、ビデオ会社の件も、結局3ヶ月しか続かなかった事に自分で嫌気がさして いた。「俺は何もできないのでは?」と思い始めた。
それから3ヶ月、現在の出光興産に携わる迄、殆ど働かなかった。自分で書くのも 何だが、軽いノイローゼのような状態だった。今の仕事はそういう意味で「社会復帰」 のような感じでいる。何も考えず、与えられた仕事をこなし、余裕が出てくると、「 馬鹿野郎! 俺にはロックしかないゼ!」と叫んでいる。どうにか元通りになれた ようだ。
その空白の3ヶ月間が、僕のこの一年を象徴しているような気がしている。
取り敢えず金が無かったので、日払いのアルバイトを繰り返した。当然、肉体労働
ばかりだ。しかも、夜から朝にかけての仕事が多かった。どこも長くは続かず、行く
と言ってはさぼり、部屋に閉じこもっていた。光熱費も払わなかった。一度、電話が
止まった。記念硬貨で煙草を買ったこともあった。仕事へ行きたいのだが、現場迄の
交通費が無い時もあった。飯は一週間に一回やって来る彼女に買って貰った。金縛り
にもあった。働かない割には、知人から金だけは借りた。誰とも会いたくなかった。
世間が何か怖くなってきた。僕は部屋で一人ずうっとボケーとして、だらだらとした
時間を過ごしていた。
「生きる」という行為が面倒になったのだ。何も意味が見い出せなくなっていた。
「俺は何かやるんだ」という、凝り固まった頭。その割には目先の状況判断にコロコ
ロと変わる気持ち。「何かやってやる」という目標自体を疑い出した。
日本は平和なのだ。3ヶ月働かなくても、生き残れる程、豊かな国なのだ。僕は自
分自身の状況を何かとても奇妙に、そして不思議に感じた。どこかが狂ってる。正直
も間違いも何も無い。全てが存在している。僕はそれらを選択する程、考え方が成立
していない。実力も無い。
不況になると言ったところで、贅沢を言わなければ職はすぐに見つかる。寿命が訪
れる迄、生き残れる。生き残らされていく。一日、一日を過ごすことが偶然のはずな
のに、当り前になっている。生きる行為が当り前として前提された、平和な世の中な
のだ。
どこかに所属する。何日かすると、欲望が生まれる。次のステップを狙う。それを
手にすると、又欲望が生れる。それをずうっと繰り返す。
「今は平和だよ。昔は食べるものが無くて」。だから今は平和だと誰かが言う。一見、
最もらしいが、Cというステップに立って、何年も前のAというステップを確認して
いるだけだ。自分の欲望を遥か過去の欲望に限定して、現在のCのステップでの欲望
をごまかしているだけだ。
僕は、それができない自分が解っていた。何処迄行っても必ずやって来る、欲望。
それが胡散ったかった。ならば始めから欲望をできるだけ消し去り、生き残らされて
居よう。そんな感じだった。何処迄行っても、いつも不満なのだ。それが面倒だった。
又、どんな成功だろうと、どんな失敗だろうと、振り返った時、何時でも「結果オ
ーライ」となっている自分が嫌だった。それなら始めから、何もしなければいい。
然程、真剣に考えた訳ではないが、その空白の3ヶ月を、僕はこのような感覚で過 ごした。これらの考えが過ぎ去って行ったのは、「どうにか、なるものさ」という楽 観的な考えだった。いつもヘビィーな時、どん底が形成されると、僕は何故か笑って しまう。全てが僕の頭の上に存在していて、それらを見上げながら僕は笑ってしまう。 そして時が経つと、まるで何事も無かったように僕を元に戻してくれる。
もうすぐ、自分で決めた一年が終わろうとしている。結局、僕は何をやっていいの か、具体的な結論が出ず、何の進展も無かった。あと少し、こんな状態でやっていこ うかとも考えたが、一年前の僕が許さないらしい。4月に僕は就職する。まだ決めて ないけど。
人間という奴は本当に弱いもので、「勢い」を止めると脳ミソも身体も動かなくな ってしまう。その事に今更ながら気付かされ、今は潰されたくないと思っている。怒 る時も、泣く時も、喜ぶ時も、哀しむ時も、立ち止まるのではなく、歩きながら、走 りながら、感じていたいと思っている。
先日のある夜、この一年間が目先の出来事としてではなく、俯瞰のような視点で色 々思い出された。結局、僕は何時でも、「見返り」を待ち望んでいる情け無い奴なの だ。「狂った世界」「馬鹿な奴ら」と叫んでいる割には、その世界から、僕は見返り を気にしている。そんな自分に矛盾を強く感じた。
「どうでも生きては行ける。でも果たしてどうでもいいのだろうか?」
そんな下らない堂々巡りはもう辞めて、始めるしかない。そう思った。もう始めるのだ。
一人で悩んでいても、「大変ねえ」と美人は僕に声を掛けてはくれない。
とても小さな自意識は捨て、自らを他人に晒け出さないとコミュニケーションが取 れないと感じた。つまり、自分自身だけでは自分は築けないのだ。存在しないのだ。
結局、どのように生きて行くのかは自分の判断次第なのだ。思い込もうとしても 「違うだろ」と忠告する直感のような自分が居る。安心して過ごしていても「ヤバイ ぜ」と話しかける自分が居る。それを大切にして行きたい。
「考えた」や「決めた」と言ったところで、それらは果敢く、又繰り返して行くの だろうが、少しでも、遅くでも、自分を押し進めるつもりだ。「流されて行こうぜ」 と呟く自分に潰される前に。
少しでも脅して行くよ。脅されるだけでは、つまらないからね。現在、そんな感じ だ。
大変、長い手紙になってしまった。別に真剣に読まないで欲しい。ただ、とある女 子校生が○○君のことを好きになってしまい、その自分の気持ちを、親友の××ちゃ んに聞いて貰いたいと思うような、そんな内容の手紙なのだから。
江藤の方の近況も知りたい。
お互い納得のいく時間を過ごそう。又、いつの日か、一緒に酒を飲める日を楽しみ
にしています。乱筆、乱文、失礼した。では。
あとがき
「4月に就職するゾ!!」この手紙は、その「報告」だけです。では。お元気で。
5月21日(木)
僕は今、元住吉の木造のアパートで、ニルヴァーナの1stを聴いている。
ここ数年、本当に転がる石のように過ごしてきた。世の中、自分の思い通りにいか
ないことばかりだ。怒り続け、弱気になり、混乱を繰り返し、いつもヘラヘラ笑い続
けた。
洋服を詰め込んだバックと、このノートやシャープ・ペンシル、それにCDウォー
クマンなどを入れた紙袋を持って、午前中の内に登戸から南武線に乗った。鶴見に着
くと、ワゴン車が僕をここ迄、連れてきた。−まるで新聞屋の時みたいだな、そう思
った。
期間従業員として、明日から三菱重工で働く。何の気負いも、何の不安も無い。全
く無いと言えば、それは嘘になるが、仕事は仕事、飄々とやるだけだ。
どの仕事も、違う、違うと繰り返し、自分が本当にやりたいことも理解せず、文句
ばかり垂れてきた。そんなことは、もうどうでもいい。僕のやりたい事は、すぐには
金にはならないのだ。だから、金の為に働く。ただ、それだけのことだ。それ以上で
も、それ以下でもない。
自らの苛付きを金で消化する僕には、印刷会社の給料は安すぎた。ただ、それだけ
のことだ。さあ、今からやり直しだ。仕事や金に追われてはいけない。自分の生き様
だけを、いつでも頭に置き続ける。ただ、それだけのことなのだ。
お前は甘いと言われる。きっとそうなのだろう。でもだから何なのだろう。そんな
言葉で僕の気持ちが変わるとでも言うのだろうか? まあ、どうでもいいことだ。生
き方、生き様、結局それが重要なのだ。それはきっと、死に方、死に様とまったく同
じことなのだろう。とろけるような甘い死に方なら、僕は素直にそれを受け入れるで
あろう。
「元住吉」という土地は、僕にとって聖地である。しかし、それは日常生活を超え る瞬間が訪れたときの元住吉のことである。だから今、僕が居るこの場所は、その名 残り、個人的観光名所といった
ところだ。そんな聖なるぬけがらの土地に、今、僕は
居るのだ。とにかく、ここに天使が舞い降りた。僕の運はそれで全て使い果たしたと、
周りに言われる、そんな理想を超えた幸福、想像もしていなかった夢が、本当に実現
された土地なのである。
しかし、この部屋は汚い。木造のシミだらけ。だけど六畳だ。そして元住吉だ。周
りは、渋谷、横浜、川崎なのである。同じ木造六畳間でも、新宿、川崎とはかなり違
う気がする。ざまあみろ! たいらよ!
結局いつでも僕にとって、あの大学時代が基本にあるような気がする。別に大学生 活のことではない。いや、同じことか? 僕の生活は成金学生とは大きくかけ離れて いた。そんなことを何の根拠もなく、直感だけで攻撃し続けていた。敵は成金学生だ けではない。店主に、客に、同僚に、先輩に、後輩に、通行人に、サラリーマンに、 酔っ払いに、社会に、システムに、親に、世の中に、あらゆるすべてのものに対して。 あの時代が、どうしても強烈に僕の感情の核を形成している。馬鹿野郎! 俺はテメ エらとは違うんだ! そう、叫んだ。いつか見てろよ! と独り小声で呟いた。−あ あ、あの生活が僕のブルースなのだ。とても重く、我武者羅な感情が、今でも僕の 根底に流れている。やはり、それは不健康なことであり、情け無いとも思うのだが、 それだけでは済まされない、とても複雑な心境がまとわりついている。そんなことを、 元住吉に来るワゴン車に揺られながら、ふと考えていた。こんなことは早く笑い飛ば すべきなのだ。周りにウゴめく、成金馬鹿や、機械人間のように…。
この文章をもう少しまとめようと思った。ダラダラ書き続けて、それぞれの共通項
を見つけ、まとめるつもりだった。でもやめた。
隣の部屋から声がする。朝鮮の人のようだ。僕は少し顔をひきつらせながら、壁に
よりかかり笑った。すると、アパートが揺れたのだ。窓ガラスがカタカタと一緒に笑
ったのだ。少し気分が変化した。少し変わった今日一日の天使なのかも知れない。
自分の気持ちや考えを、このように文字にしたり、誰かに話したりした後、とても
落ち込んでしまう。その気持ちは嘘ではなかったはずなのに「嘘だろ」と直感で感じ
てしまう。今、この時点でも思っている。
僕の心の中の動きは当然、言葉や音や画面で構成されたものではないだろうし、そ
の一瞬一瞬の変化は、時間という概念に囚われていないからなのだろう。
全て嘘だ。偽りだ。
かと言って、当然、嘘も書いていない。喋っていない。では何故、そう感じてしま
うかだ。結局、思った全てのことが消化されていないのが、一番の原因だからなのだ
ろう。幾ら、正直に書きました、これは真実です、と言ったところで、それだけでは
ないはずなのだから。
しかし、それらは全て表現することが困難であったとしても、全く書かなかったり、
話さなかったりすると、その考えの概要さえ、どこかへ葬り去られてしまう。消され
てしまう。全く、厄介だ。
悩んで、悩んで、悩み抜いてる。
なんて書こうと思えば、いつでも書ける。実際、今、そう思っているし、それと同
時に脳ミソの裏の方で、ゲラゲラ笑い飛ばしている。まだ、何もやってないじゃない
か!!
ロックン・ロールは最高だ。ロックン・ロールは最低だ。
「作品」を作ることは、本当に素晴らしい。初めから全てが虚構の世界の出来事な ので、自己の主張、テーマだけは抜群に語ることができる。本当に抜ける。これは気 持ちいい。しかし、それだけ創作には苦痛が伴う。並の苦痛ではないと思うのだけど、 どれも最後迄完成出来ず、結局いつも途中で逃げてしまうので、快楽も中途半端な訳 だ。
逃げると割と楽で、何もしなくて、何も考えなくて、あの作品を作るテーマの“馬
鹿野郎”と思える人物に自分が変化していく。そして慌てる。でもその時、これがま
た何一つ浮かばない。結局、浮かばせるコツを既に忘れている。
−それが今だ。悩んでいる、のかな? とにかくヤバイ、怖い。
生活をだらだら繰り返していると、性欲や金欲にいつも振り回され
てしまう。その
一つが“就職”だった。
退職して一年間が経ち、何社か中途採用の募集に応募した。笑ってしまうように落
ちた。これが結果的には良かった、のかどうかは知らないが、とにかく、今の状態が
コレだ。きっと同じことになっていた。
目からウロコが落ちるというか、就職というシステムに対して抱いていたものを見
事に解決してくれたのは、ビートたけしだった。
「TVタックル」の人生相談の特集で、若い女の娘からの相談に対して答えたとき
だった。その娘は、仕事に就くと覚えている内は面白いのだけれど、それから先が何
も無いと嫌になってしまい、つい転職してしまう。初めは、まだ若いからと思ってい
たのだが、どうも転職がクセになっているのでは、ととても不安に感じ始めてきたと
いう。
解答者達が「贅沢な…」「最低三年はやらなきゃ…」「今の若いものは…」となり、
最後にたけしが言った。
「この娘、頭がいいんだよ。仕事覚えちゃったら、つまらなくなるの当然だよ」
僕はその答えに魅かれた。何故か? 自分が言い訳されている気がしたのだ。見事
な迄に。そして、たけしは続けた。
「ただね、この娘、自分に合う仕事探してると思うんだ。だけど、そこで勘違いしち
ゃいけないのは、金の為、生活の為の仕事なのか、自分のスタイルの為の仕事なのか、
区別してるかどうかだね。そこで、自分自身の為の仕事を探して、金もある程度貰お
うなんて、絶対無理だからね。どちらかなんだよ。俺はその点、仕事としてではなく、
スタイルとして漫才師を選んだ。成功しようが、失敗しようが、二の次なんだ。売れ
なくても格好良いと思ったから、そっちを選んだ。喰えないときは肉体労働に行った
し、たまたま、それで俺は売れたけど、そのところをはっきりさせてないとね、自分
の好きなことで飯喰おうなんて甘い話はないから」
ガツーンときた。とくに「成功しようが、失敗しようが、それは二の次なんだ」が
いい、スタイルだ、そう思った。これだ! これだよ、これ、そうか!! だった。
俺はそれを勘違いしていたし、あの世間体、そうあの大好きな、それにこだわって
いたんだと知らされた、気持ち良かった。
余分なものは排除し、あー、これだ。ヒッヒッヒ…
あーあ、なんだ… 今、ぬきたい!!