あらゆる世界の月とカビ 「○qua ○orld/○美物語」制作にあたって 1995/10
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 CD-ROMという媒体で何か新しく面白いことは出来ないだろうか?
 数えられない程に出回っているCD-ROMだが、どれを観ても同じような流れ、同じような認識で作られているような気がしてならない。すでに一定のフォーマットに囚われてしまっている気がするのだ。
 CD-ROMという表現形態を僕は一つのメディアとして捉えている。つまり映画や音楽、テレビ、ラジオ、本などと同じように扱われるべきモノだと考えている。現状では容量やメモリーの限界、ハードの普及率など指摘されるべき問題は多々あるが、ハードの進化と共に今後改善されていくことと思われる。
 映画にもテレビにも本にも音楽にも、それぞれ様々なジャンル分けがあり細分化されている。しかしCD-ROMには小手先のジャンル分けこそあれ、本質的な意味での分かれ方はなされていない。何故この媒体を多角的に扱おうとしないのか?
 結局現在CD-ROMに何が足りないのかといえば、製作者側の明確な意思なのだ。内容から製作者側の顔が見えて来ない。ポリゴンを使ってグリグリ動かそうが、アニメ・キャラクターを裸にしようが、内容は何でもいいのだが、どこの誰がどのような意識の下で作り上げたのかが伝わって来ないのだ。只でさえデジタル色の強い商品であるのに、それらは本当に無機質な感触だけでしかない。
 本来、優れた作品・商品にはその作者の思想や世界観がこぼれてくるものなのである。だからこそロックを聴いてドロップアウトしてしまったり、眉を剃り落としてその人の世界観さえ変えてしまうことがあるのだ。CD-ROMは当然まだそのレベルにまで達していない。まだまだ白紙状態、全くの無法地帯であるのだ。
 と、いうようなCD-ROMへの期待を僕は常に抱いている。

 さて、『○QUA ○ORLD/○美物語』である。
 周囲の反応は結局の処、皆「戸惑い」であった。ムービーメインの余りにも単純な構成やゲーム性の無視など、出来るだけ単純に簡略化した垂れ流しソフトを狙ったのだが、狙ったことに対し皆戸惑ってしまったのだ。ある意味で狙いは成功したのだろう。従来の軌道から外れていた結果として皆戸惑っている訳なのだから。販売の担当の方と打ち合わせをすると、必ずそのような話題に収束してしまう。が、商品として扱っている以上1枚でも多く売れなくてはならないのだ。
 観てお判りの通り、一番力を入れたのはCGの部分である。グラフィック担当者と出来る、出来ないと揉めに揉めて、最後の最後に上げて来たのがあのイルカの映像だった。本当にあの画を観た時は泣きそうになってしまった。
 また音楽担当の方と話をした時に、この映像って切ないよねという意見で盛り上がったことも覚えている。
 このCGムービー部分には言葉も無く、テキストも無い。只ここには僕の世界観がかなり入っている。そのことがとても気に入っている点である。
 販売等の打ち合わせ時には、無謀過ぎたかなとも感じなくもないが、好きなタイトルである。沢山売れて認識して頂いてCD-ROMの世界を広げていきたい。こういうタイトルもアリなんだよ、みたいな。皆さん、是非買って下さい。邪魔にはならないソフトだと自負しています。

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