電影堪能 魅力溢れるお気に入り映画達の紹介です。
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ダンサー・イン・ザ・ダーク 監督・脚本:ラース・フォン・トリアー/2000 2002.05.20(MON)
dancer in the dark/written & directed by LARS VON TRIER

もう泣いたよ。本当あらゆる意味で滅茶苦茶やられた。先にやれらてしまったことが満載の映画でもあった。

まず大前提として、ミュージカル映画が大ッ嫌いなのだ! 映画じゃなくてもミュージカルという方程式が大ッ嫌いなのだ。アレは俳優からスタッフ迄、制作に携わってる人間、その全員がラリッていると信じている。でなきゃ、あんな人を殺してからすぐに歌を唄ってしまうなんて発想が出てくるはずがない。
曲主体の、曲を聞かせる為のドラマなのかとも考えてみたが、やはり違う気がする。あんなシナリオ設定を朗々と唄い上げてしまっては、曲としての普遍性も何もない。だから、そんな目的とも思えない。
ミュージカルとは一体何なのだ? 何を目的として、何の為に存在しているのか?
何でさっき迄、普通に喋っていたのに、突然唄い出すのだろう? 大声で怒鳴るなり、泣き喚きさえすれば、事足りることなのではないのか。何でワザワザ自分の心情にメロディ迄付けて、唄わなくてはいけないのか。まったく以って理解不能。もう何が何だか判らない。
絶対に連中はラリッている。ミュージカルなんて根本的に無理があるんだよ。(その血縁関係にディズニーという存在もあるが、これは次回にする)

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』である。その大ッ嫌いなミュージカル映画なのだ。しかし、もう参ってしまった。構成に全く違和感を感じさせないどころか、逆にミュージカルという手法でなければ、この表現は出来ないとさえ感じた。素晴らしい! そうだよ! この構成ならミュージカルは成立する! これは正しい!

曲は勿論ビョークで、彼女のあの世界である。ビョークに関しては曲云々というよりも、女優としての存在感の方に強く意識が向けられた。やっぱりイっちゃってるよ、この人。ビョークとセルマとを分けるラインなんて、全く存在して無いじゃん! 姪の美○子とも区別が付かないけどさ。

DVでの撮影/編集も素晴らしかった。手持ちカメラによる映像と細かなカットの繋ぎで、独特な日常の空気感を見事に醸し出していた。メイキングで確認してみたら、そのカメラの数は尋常じゃなかったけれど、本当に家庭用DVカメラでの撮影であった。あれにはビックリしたな。
で、その撮影監督がロビー・ミュラーだと知って、尚更驚いてしまった。ヴェンダース、ジャームッシュ、コックス等の映画を担当した俺達の世代のアイドル(?)/神様(?)みたいな撮影監督なのである。最近名前を聞いてないな、と思っていたら、いきなりのクレジット。嬉しい! ましてその撮影スタイルも、以前とは全然違うじゃん!

俳優も好きな連中で固められていた。カトリーヌ・ドヌーブは勿論好きだし、ショーン・ペン映画でお馴染みのデヴィッド・モースも気になる俳優だ。
だけど何より驚いたのは、ジャック・マイヨールが居たことだ!(本人ではない) 最近徐々に映画へ戻ってきていることは聞いていたが、まさかこの映画で会えるとは思わなかった。ジャン・レノと対照的な道へ進んだよな。何故そうなったかと言うと、本当にあの映画の影響/世間の反応が原因らしいのだ。それにしても老けたな。段々そのまんま東に似てきたよな…。名前を書いてなかった。ジャン・マルク・バールのことです。

等々、気になった要素を書き連ねたが、もうとにかく滅茶苦茶素晴らしい映画なのだ。観終わった後の水分補給は忘れずにである。
…だけどね。正しい者が救われないのは嫌だ! 絶対に嫌だ! 映画なのに現実過ぎる。悲しい…。悲し過ぎる…。本当に痛かった。良かったです。

監督のラース・フォン・トリアーは今迄ノー・チェックだったので、早速以前の作品を観る為にビデオ屋へ。デンマーク人だからなのか、探すのが大変だった。そしてやっと見つけたのが『奇跡の海(1996)』だった。ここでふと気付く。『奇跡の海』ってジョン・セイルズじゃないの?

NYインディーズ系で面白くも無い映画を撮っていたジョン・セイルズという監督が居るのだが、その人の新作映画のCMで以前驚かされたことがあった。もう甘ったるい、そのお涙頂戴の匂いが漂う映像からは、元NYインディーズのポリシーなどは微塵も感じられなかった。別に好きな監督では無かったのだが、強く幻滅したことを覚えている。魂を売りやがったな、何があってもこの映画だけは絶対に観ないぞ。その映画のタイトルが『フィオナの海(1994)』という。

この時点ですべてが判明する。『フィオナの海』=『奇跡の海』だと思っていたのだ。自分の勘違いとは言え、明らかにややこしい。まして製作年数も近いのだ。誰の責任かと言えば、邦題をつけた連中だろう、これは。原題『BREAKING THE WAVES/奇跡の海』『THE SECRET OF ROAN INISH/フィオナの海』。どっちもどっちである。以上、余談。

で、その観損ねていた『奇跡の海』なのだが、こちらも凄まじかった。
ミュージカル要素を除いたその表現手法は、この時点でも充分に確立されていて『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の日常シーンと大差はない。だが、その世界観については観る側の好み/耐久度の限界によって、かなり印象の違いを受けるのではないだろうか。
個人的には『奇跡の海』の“痛さ”の方が壮絶な感じがした。こっちの方がイッてしまっている。だが現実味を捉えた身近な“痛さ”が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』には存在している。で、どっちが好きなのか?
ポップ性という意味で、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の“痛さ”で止めておきたいかな。

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